短編用

□ニオイヒバ(私の為に生きて)
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【ニオイヒバ:私の為に生きて】




…パシンッ!…




「…えっ…」





「希望…あんた最低!恵理の彼氏を寝取るなんて!」





最近同じクラスの竹下希望(タケシタ ノゾミ)が同じクラスの木崎恵理(キザキ エリ)の彼氏を寝取ったという噂がながれた。




最初は無視から始まり、日にちが過ぎていくと靴を隠すや机や教科書に【死ね】やら【泥棒猫】や【阿婆擦れ】と落書きされている。





今も教室の前の方で竹下さんが数人の女子に囲まれている。





「私は恵理の彼氏を寝取ってない!」





「じゃぁなんで恵理はアンタが取ったって言うのよ!」





本人はやっていないと言い張るが、信じる人はやはり誰もいなかった。




イジメが始まってから半年、竹下さんが隣のクラスの男子に回されたという噂が流れた。




「アイツ回されたんだってね」





前列の机には木崎さんの取り巻きの子達が噂話をネタに話している。





「恵理の彼氏寝取ったんだから自業自得だって」





「皆、希望ちゃんが可哀想だよ・・・」






さも当然だと言う彼女たちの中に木崎さんは悲しそうな顔をして止める。





「恵理は本当優しいなぁ〜」





「アレと大違い!」





「それ言えているんですけど!」





周りは木崎さんをベタ褒めしている





だけど、木崎さん気付いているかな?








その顔が…不気味に歪んでいるのを…










私は5限目の授業をサボリ、屋上で空を眺めていた。





しばらくぼーっとしていると誰かが屋上に入ってくる音が聞こえた、入ってきたのは…






竹下 希望 だ。







「もう…耐えられない…」






小さな声で呟くと屋上のフェンスを乗り越え、空を見上げていた。



今から飛び降り自殺でもする気みたいだな…。





「ごめんね…お父さん…お母さん…」




『…ここから死ぬ気?』





「!?…冬海さん…」






どうやら竹下さんは私が同じクラスの人間だと分かったみたいだ。



今にも飛び降りるというところで私は声をかけると、竹下さんは驚いた顔をして「なんで」といった。






『ねぇ…死ぬの?』





「…冬海さんには関係ないでしょ…」





うつろな目をしてフェンスから手を離し私に背を向けた。





『確かに関係ないけどさ…竹下さん…今ここから飛び降りて死ぬなら…その命私にちょうだい』






「…!…」






笑みを浮かべて言うと竹下さんは目を見開き私を見た…。






『私の為に生きて…それなら希望は私が助けてあげる…』






私はフェンスの前に行き手を差し出し、真っ直ぐ希望の目を見た。







『私が希望のお願いを聞いてあげる…』






「…ほんと?…ほんとにほんと?…」






『うん…本当だよ…だから…私に希望をちょうだい?』






「…うん…っ…うんっ…玲奈っ…」





私は涙を流す希望をフェンス越しから抱きしめ家に連れて帰った。







…これで…希望は私のモノ…





   …さて…女狐(木崎)さん…

       




      …私の可愛いお人形さん(希望)を傷つけた罪は重いわよ…










後日…木崎 恵理の嘘と犯罪の数々を全て調べて学校中にバラした。




どうやら付き合っていると思っていた彼氏は木崎がストーカーしていただけの相手で、その彼が希望を好きになった事がわかり木崎は嫉妬から彼氏を希望に寝取られたと嘘を言ったのだった。







「玲奈…大好き…私を捨てないで…置いていかないでね?」




『あたりまえじゃない…希望は私のだから捨てないよ…ずーっと…ね』





END

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