短編用

□Wiedersehen
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―10年後!この桜の木の前でまた会おう!夏美―


―うん!10年後!約束だよ竜二―


―約束だ!そしたら俺と結婚してくれるか?―


―もちろんだよ!―






「おーい竜二明日休みってなんで?」


『あぁ、明日だけは絶対にはずせない用事があるんだよ』


「めっずらしいな〜竜二が…女とデートか!?」


25歳で課長になり部下に恵まれたが、その分女性社員の無駄に媚びうる視線や喫煙所でタバコを吸えば偶然を装って入ってきたりして話しかけてくる、その後はいつも部下や同僚のコイツがからかってくる。


『まぁ…強ち間違えではないけどな』


「女ぁ!?マジで!お前が!?」


驚く健太に俺は苦笑いをすると10年前に再会を約束した彼女の事を話してやった、すると「だからお前女からの告白全て断ってんのか〜」っと納得した顔でタバコを吸い始めた。


「竜二目当ての女ががっかりするぜ〜」


『俺にとっては関係なし』


別に社内の女が何人がっかりしようが俺には関係なし、俺自身は仕事の仲間と彼女が居ればいい感じだ。


「冷てぇ奴〜この前もマドンナちゃん振ったんだってな〜」


『マドンナちゃんって誰だよ』



「ちょッ…竜二マドンナちゃんって言ったら木下美咲(きのした みさき)ちゃんだろこの前お前に告白してた子!」



名前まで言われて思い返してみるとやたらしつこく自分をアピールしていた女性社員を思い出してきた。





宴会の時には酔った振りをしてよく俺の腕に絡んできては胸の谷間をくっ付けてきたただの雌猫だ。



『あの雌猫か…断ったらキスしてこようとしたしな』



「うわぁ…天然で清楚な子って言われてるマドンナちゃんを雌猫呼ばわりって、ってなんでうちの部署以外の男どもはマドンナちゃんを天然で清楚って思えるのかがわかんねぇ」



そうは言っている健太はケタケタ笑っているがコイツも顔は良い方であるが現在部下の佐伯真子(さえき まこ)と熱愛中である。



それでも狙う猛禽女は星の数ほどいる、実際にまだアタックしている女もいるのだ。



「で、その彼女と明日10年ぶりに再会する訳っしょ」



『あぁ…綺麗になってるだろうな…』



「桜が?それとも彼女が〜」



笑いながら言う健太に俺は即「彼女が」と言うとさっきより笑い出したので脇腹を小突いた。



しまいには「俺も明日有給とって行こうかな〜」なんて言うしまつ。



『ほら、休憩時間終わりだ午後の仕事もちゃっちゃと終わらせるぞ』



「ほいよ竜二課長♪」






午後の仕事も順調に進み定時に帰宅できたため、鞄を持って駐車場に向かった。



「荒木さぁん!」



駐車場に続く道で最近聞き覚えのある声に呼び止められ一応振り向くと、最近告白してきた例の木下が小走りで近づいてきた。



『何か御用ですか?』



「あの…えっとですねぇ…」



この前の告白を断ったはずなのだがこの雌猫は理解力がないらしい、身長的に俺の方が高い為コイツが上目使いになるが全く可愛くもなんともない。



「やっぱりぃ…私とお付き合いしていただけませんかぁ?」



『この前も言いましたが、私は付き合う気はないので』



コイツの目は「なんで」といった顔で俺を見るが周りの男どもがチヤホヤしたせいでこの雌猫は「自分は可愛い」告白をすれば必ず手に入るという思い違いをしているのだ。



「ねぇ待ってぇ!好きなの!付き合いたいの!美咲を好きになってよ!」



そのまま帰ろうとしたら急に抱き着いてきて自分を好きになれなどアホ抜かしているコイツにだんだんとイライラしてきた。



『いい加減にしつこいです、俺には想い人がいるので貴女に好意を抱くことはない』




しつこい雌猫にはっきり言い抱き着いている腕を無理やり外してさっさと駐車場に向かうと車に乗り帰宅した。




家についてから風呂を済ませ夕食を終えるとベッドに入り眠りについた。



そして翌朝は朝食をとると服を着替え車で約束の桜の木が生えている自然公園に向かった。




駐車場に車を止め桜の木が生えている自然公園の中心には大きな池がありその脇に大きな桜の木が1本植わっている。
懐かしい桜の木に俺は近づくと上を眺めて昔交わした約束を思い出していた。




『俺と結婚してくれるかってどんだけ俺ガキなんだよ』




何気に昔の俺は恥ずかしい事を言っていたと思い自分が少し恥ずかしくなった。



「私は竜二のその言葉が嬉しかったけど?」




独り言を言う俺の言葉にまさか返事がくるなんて思わず周りを見ると木の後ろからひょっこりと顔を出す女性に驚いた。




居たのは10年前にここで再会を約束した丙夏美(ひのえ なつみ)本人だった。



『!…夏美居たのかよ!?』




今の言葉も聞かれていたらしく、俺は顔が熱くなるのを感じ焦って声が大きくなってしまった。



「もちろん!だって大事な約束だもの」




嬉しそうに微笑む夏美は昔と変わらなく…いや昔以上に綺麗な微笑みを浮かべている。




「で、竜二はまだ私を想ってくれていますか?」



『当たり前だろ…夏美…俺と結婚してください』




「ふふふ…はい!私を竜二のお嫁さんにしてください」






俺は嬉しそうに笑う夏美を抱きしめキスをした。







END


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あとがき

はい今回「Wiedersehen」を読んでいただき誠にありがとうございます!

「Wiedersehen」と言うのはドイツ語で「再会」って意味なのですが
「Versprechen」「約束」の方が合っているかもしれませんね(汗)



今後とも「真夜中の散歩道」をどうぞよろしくお願いします!





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