短編用
□人魚姫
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ある日の夜…私は人間の王子様に恋をしました…
「ねぇ…レイラ貴女どうしたの?」
「そうね元気がないわよ?」
『リフィティア…メリッサ…』
浮かない顔をしているレイラに2人は心配そうに声をかけるがレイラは「大丈夫」と良い無理やり笑みを浮かべた。
「ねぇ、知ってる?」
「もしかして噂の“人間になれる薬”を作る魔女の事?」
「そう!むかしお城の人魚姫様が飲んで人間になったって噂!」
「確か北の暗い洞窟に住んでいるって聞いたわね…」
普段通りの生活をしているなか他の人魚達がはなしている話が聞こえた。
―人間になれれば…もしかしたらあの人に!…王子様に会える!―
私は直ぐに北にある暗い洞窟…魔女の住んでいる洞窟に向かった…。
そのあとに話している人魚たちの話には続きもあった。
「でも“人間になる薬”を貰うにはそれなりの対価が必要よね?」
「えぇ、たしか…私たちの“美しい声”が取られてしまうらしいわ…それに“相手に拒まれれば海の泡に”なってしまうのよね」
あれから私は北の方角に向かい泳ぎ続けた…だんだんと暗くなる海に私の心に不安と恐怖が襲ってきた。
そんな中ある一部に光が灯っているのが見えた…あそこが“魔女の住む洞窟”なのだろう。
中に入ると人魚のおばあさんが1人居た、私は勇気を振り絞って声を出した。
『こんにちは、おばあさん…あの…貴女が“人間になれる薬”をくれるという“魔女”ですか?』
おばあさん…魔女の顔はそれほど恐ろしくなく少し笑みを浮かべていた。
「あぁ、そうさ 人間になりたいのかい?…人間に恋をしたんだね?」
『はい!』
「お代は高いけど構わないかい?」
『かまいません!』
「…まずその美しい声をもらいう、それに相手に拒まれたら“海の泡へ”と消えてしまうよ」
『覚悟はできています!』
魔女の言葉に私は真剣な気持ちを伝えるように目を見ると何故か魔女の笑みが優しく見えた。
「よろしい、これを陸に上がったら飲みなさい」
『!…ありがとうございますあばあさん!』
クスリを貰うと私は急いで陸に上がる為に泳ぎだした。
「応援しているよ、可愛い人魚さん…」
魔女の言葉はレイラには届いていないが魔女は泳いでいくレイラを優しく見守っていた。
あれからレイラは人間になり、運よく王子様と出会いお城に暮らすようになって幸せに暮らしていたが手紙を書いた。
―クリフ王子様へ―
私はクリフ王子様が好きです…
この気持ちに嘘偽りはありません
このお返事は今日の夕方、北の海辺の丘で待っています。
―レイラより―
私はクリフ王子の机に手紙を置くと待ち合わせの丘まで向かった。
時間は過ぎていき約束の夕方、王子は来てくれた。
「レイラ…手紙の返事だけど…ごめんね、君の気持には答えられない」
クリフ王子が申し訳なさそうにレイラを見て訳を話し始めた。
「僕は隣国の王女と結婚しなければならない…僕は王子だから僕の体は国の物…この政略結婚に乗らなければこの国の民を救うことができないんだ…本当にごめん」
あぁ…わかっていたわ…この恋が実る事がないことは、でもちゃんと向き合ってくれたそれだけで私は満足よ
頭をさげる王子の姿にレイラは足が震えていた精一杯の笑みを作り足元に言葉を残した。
―やっぱり あなたは とっても素敵な人です 私はあなたを好きになって良かったわ!―
最後にクリフ王子の顔を見て海に向かって走り出し…
海に飛び込んだ。
海に入った体は少しずつ泡へと変わっていく。
そう…少しずつ
少しずつ…
そんな自分の手や髪の毛を見て自虐的な笑みを浮かべレイラ体は1つの小さな光へと変わった。
光へと変わったレイラは側に影がある事に気付いた。
「…よく自分の恋を貫き通したね…あたしゃあんたみたいな子が好きだよ」
いたのは“人間になれる薬”をくれた魔女のおばあさんだった。
「近頃の子はあんたみたいな子はめっきり減ってしまったよ…ねぇ、あんた良かったら私のあとを継がないかい?あんたの魂を“魔女”としてなら生き返れるんだよ、私もそうやって魔女になったんだ」
おばあさんは優しく光を手の平に乗せ優しく微笑んだ。
「私はもう長くないから、私に代わってあんたみたいな子の力になってはくれないか…どうだい?」
…うん…私が力になれるなら、私を魔女にしてください…
「 あ り が と う 」
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